防炎規制と防炎ラベル
2020.12.15|カテゴリー:防炎知識
テント生地に関するご相談のなかで、しばしばこれは防炎ですか?という質問をお受けすることがあります。
その際には、なるべく質問者の方がどういう意図で生地が「防炎」なのかを尋ねているのか確認し、お答えするように努めています。
実は、防炎と一言でいっても設置できる場所に注意が必要な「防炎品」があり、単純に防炎性能を有しているからどこに使用しても良いというわけではありません。
そんなわけで今回はちょっと長くなりますが、防炎にまつわる規制のお話をご紹介いたします。
1.防炎規制
消防法令では、映画館や飲食店・ホテルのように不特定多数の人が利用することを想定した特定用途の建物や、災害弱者の方が多く集まる病院・幼稚園などの特定施設を「防炎防火対象物」と定めています。
この防炎防火対象物に指定された施設では、カーテンやじゅうたん等の火災初期時に火種となりやすい品目を「防炎対象物品(防炎物品)」に指定し、必ず基準以上の「防炎性能」を備えた製品を使用しなければならないと決められています。
こうした制限のことを「防炎規制」といいます。
防炎性能とは、火が燃え広がりにくい性質のことです。
「防炎」は「不燃」と違い、あくまでも燃えにくいことを表す用語ですが、もし着火しても自己消火性を有してるため、火がそれ以上に燃え広がることがありません。
一方の不燃性能も「絶対に燃えない」という意味ではなく、20分間その表面が加熱されても燃焼せず、溶融・損傷などが起こらず、有害な煙やガスを発生しない性質を表現する用語です。
1-1.防炎規制の対象となる施設・建築物
防炎物品にはどんな品目が指定されていて、どういった施設が防炎規制の対象となるのかをざっと確認しておきましょう。
- 高層建築物(高さが31メートルを超える建築物)
- 地下街
- 劇場、映画館、集会場など
- キャバレー、ナイトクラブや性風俗関連に類する店舗など
- カラオケボックス等の個室を客に提供する店舗
- 飲食店、料理店など
- 百貨店、マーケットなど
- 旅館、ホテル、宿泊所など
- 病院、診療所、幼稚園や特別支援学校など
- 公衆浴場など
- 映画スタジオ、テレビスタジオ
- 複合用途防火対象物で上記の用途に供されている部分
- 建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものなど
- 工事中の建築物・工作物など
特に注意してもらいたいのが、リストの最後に挙がっている
“工事中の建築物・工作物など“ の部分です。
これは建築工事で工事中に守らなければならない防炎規制のことで、規制を受ける対象品目は「工事用シート」です。
工事現場の仮設足場などに掛かっているシート、と言えば分かりやすいでしょうか?
工事中には現場での溶接作業など火を取り扱う事もあるため、たとえ火災が発生したとしても燃え広がらないように防炎物品を使用することが消防法令において決められているのです。
上記リストの他の対象施設が、施設の形状や用途に該当することで規制を受けるのに対し、リストの最後だけは建物の用途に関係なく、建築工事に関わる規制となっています。
※厳密には都市計画区域外のもっぱら住居用途の建物とそれに付属する工事は対象外となります。
1-2.防炎物品が義務付けられる対象品目
他にはどんな品目が防炎物品に指定されているのかを確認しましょう。
数が多いため、とても全部の品目を列挙できませんので抜粋して紹介します。
- カーテン
- 布製のブラインド
- 暗幕
- じゅうたん等
- どん帳
- 展示用合板
- 舞台において使用する幕と大道具用合板
- 劇場や映画館で使用される映写用スクリーン
- 工事用シート
工事用シートは先に触れた通り、建築工事の現場にかかる防炎規制です。
じゅうたん等の品目中には、織りカーペット、ござ、合成樹脂製床シートの他にも人工芝など多くの製品が防炎物品に指定されています。
ホテルのカーペットや映画館のスクリーン、病院や幼稚園に設置されるカーテンというように、不特定多数の利用者が想定される建物で上述の品目を使用する場合には、防炎性能が付与された製品を使用しなければなりません。
2.防炎物品と防炎製品
ここまでの章では、防炎防火対象物に指定された建物において、カーテンやじゅうたん等の特定品目は防炎物品という防炎性能を備えた製品を使用しなければならないことを紹介しました。
この防炎物品とは別に、防炎製品という用語があります。
防炎物品が消防法令などで使用が義務付けられている特定製品を指す用語であるのに対し、防炎製品は消防法令などで義務を課されていませんが、火災予防の観点から自主的に防炎性能品の使用が推奨されている製品のことです。両者を総称して「防炎品」と呼ぶこともあります。
2-1.防炎製品
防炎製品は防炎規制の対象となる防炎物品以外の品目で、防炎物品と同じく、防炎性能を有する製品です。
寝具や衣服類、パーティション、テントなど数多くの防炎製品が存在します。防炎製品はそれぞれの使用用途に応じた防炎性能試験と審査基準を満たす製品に対し、防炎製品認定委員会が認定を行っています。
- 寝具類(ふとん、枕カバー、毛布、タオルケット等)
- テント類(キャンプ用テント、養生シート、横断幕等)
- 防災頭巾等
- 衣服類(パジャマ、エプロン等)
- 布張家具(椅子、ソファー等)
- 木製等ブラインド(布製ブラインド以外のブラインド)
- 災害用間仕切り等
- ローパーティションパネル
- 展示用パネル
- 祭壇
- 襖紙・障子紙等
- マット類(バスマット、灰皿マット等)
- 防火服
- 作業服
上記リスト品以外にも多くの製品が防炎製品としての認定を受けて、市場に流通しています。
皆さんが屋外で目にする機会の多い製品に、店先ののぼり(幟)や懸垂幕といったテント製の広告商品にも防炎製品が使われています。
3.防炎表示
防炎品を導入することは、初期火災の予防に対し非常に有効ですが、その製品が防炎性能を備えている製品なのかどうかは外観では見分けがつきません。
そこで防炎物品と防炎製品には、それぞれに防炎表示ラベルが存在します。その製品が防炎性能を有していることが簡単に判別できるようになっているのです。
3-1.防炎ラベル
防炎物品やその材料には、防炎物品ラベルを表示しています。
この表示が付されていないものは、防炎物品として販売または販売のために陳列することが禁じられています。
つまり防炎物品として流通している製品には、必ず防炎物品ラベルが製品のどこかしらに貼付または縫付けられています。
一方、防炎製品の場合には防炎製品ラベルを表示します。
防炎製品ラベルは防炎製品および防炎製品の材料・素材に表示されるラベルであり、防炎物品ラベルとは別のラベルが添付されます。
防炎製品ラベルが表示された製品を、防炎物品の使用が義務付けられている場所に使用することや、防炎製品を防炎物品として販売することは禁止されています。
防炎製品は防炎物品の代わりにはなりませんので、設置する際には必ず専門の方にご相談ください。
3-2.防炎表示登録事業者
防炎ラベルの表示は、誰でも自由に行えるわけではありません。
消防庁長官および日本防炎協会の登録を受けた登録事業者だけに許可されています。
防炎ラベルには、その製品をどこの事業者が縫製・施工したのかという情報が記されています。
防炎ラベルはその製品が防炎性能を備えた商品であることを保証するものであると同時に、問題があった時には該当製品の製造・施工業者を特定する目的もあります。
そのため、防炎品の加工業者は必ず事業所番号(登録者番号)を持つ認定事業者に限られ、防炎品の製造に対して責任を明確にする大変に重要な意味のあるラベルです。
また、防炎物品ラベルや防炎製品ラベルに記載されているのはあくまでも加工・縫製、施工を行った事業所番号です。
その製品に使用されている防炎素材の認定番号ではありませんので注意してください。
製品に使用されている素材生地の防炎認定番号や認定証が必要な場合は、施工業者や納入元にお問い合わせください。
4.まとめ
今回は防炎規制とそれにまつわる防炎ラベル等について紹介してきました。
- 不特定多数の人が利用する特定建物を、防炎防火対象物と定めている
- 防炎防火対象物には防炎規制がかかる
- 防炎防火対象物の指定部分には防炎物品を使用しなければならない
- 防炎物品以外にも、防炎製品が存在する
- 防炎製品は、防炎物品の代替とすることはできない
- 防炎品には防炎物品ラベルと防炎製品ラベルがそれぞれ貼られている
弊社松山産業はテントシートの専門業者として、消防庁から防炎表示者登録の認可を受けております。
お客様が安心して製品を購入しご使用していただけるように、弊社では防炎品を活用した様々な製品のご提供をさせていただいております。
是非お気軽にご相談ください。